デンマークの一風変わった福祉機器見本市「CareWare」について
超高齢社会における介護ニーズの増大に向け、介護現場でのロボットやICTの活用が期待されています。経済産業省と厚生労働省は「ロボット技術の介護利用における重点分野」を策定し、介護ロボットの開発支援を開始しました。しかし、介護現場への福祉機器の導入がなかなか進まないという厳しい状況が続いています。
一方、日本と同じく高齢化が進むデンマークでは、福祉現場で用いられる技術を「ウェルフェア・テクノロジー」と総称し、国全体で積極的に活用しようとする動きが見られます。日本語に直訳すると「福祉テクノロジー」となるこれらの技術は、デンマークでは「市民の日常生活を支援する技術」と位置付けられており、日本の介護ロボットなどよりも広い意味を有しています。
なぜ、デンマークでは福祉機器の活用が進んでいるのでしょうか?
なぜ、日本では福祉機器が普及しないのでしょうか?
これらの疑問については、下記の記事内で説明しておりますので、今回はデンマークの特徴的な取り組みについて紹介しします。
・【デンマークで福祉機器の活用が進んでいる理由】デンマークは福祉機器先進国ではなく、分担して試行錯誤をしている国である
・【福祉機器はなぜ普及しないのか?】日本の福祉機器市場の課題と海外の取り組みについて
具体的には、デンマークで開催されている「CareWare」というマッチングイベントについてです。
なお、弊社は「CareWare」の主催者であるデンマークのオーフス市から協力を受け、2019年の9月に日本版の「CareWare Japan」を開催しました。
CareWareとは? 日本で開催されている展示会とは明確に異なります
ユーザーとメーカーのマッチングイベントとして、展示会やメーカー主催の説明会をイメージされる方がほとんどだと思いますが、CareWareはそれらのイベントとは明確に異なります。
CareWareの特徴
・デンマークの自治体(オーフス市)が主催する
・出展条件を満たさない製品は出展できない
・ガイドツアー形式で実施される
デンマークの自治体(オーフス市)が主催する
CareWareは全国の自治体福祉課の担当者を対象にしたイベントであり、デンマーク第二の都市であるオーフス市が主催しています。
【デンマークで福祉機器の活用が進んでいる理由】の記事で紹介したように、デンマークでは各自治体が分担して福祉機器の効果検証と導入の可否判断を行い、市場にある福祉機器を効率的に探索、検証しようとする動きがあります。CareWareもこのような取り組みの一環であり、他自治体に比べて予算が潤沢なオーフス市が、福祉機器の事例を効率的に全国に展開しようとするものです。
出展条件を満たさない製品は出展できない
CareWareへ出展できる製品は下記の通り決められています。
・開催テーマ(課題)に合致するソリューション(製品)
・販売されていて、かつ使用事例がある製品
・1社につき1製品
※1度出展された製品は、新たな適用事例がない限り展示されない
多数の製品が出展される一般的な展示会と異なり、CareWareでは決められたテーマに合致するソリューション(製品)のみが出展を許可されます。また、テーマに合致していても販売されていない製品や使用事例がない製品は出展することはできません。
CareWareでは、参加者の福祉課担当職員にその場で導入の可否を検討してもらうことが想定されています。そのため、「その製品はどこで買えるのか?」「導入には施設のオペレーションをどのように変えなければいけないのか?」という情報が重要になるのです。
また、一度出展された製品は新たな適用事例がない限り出展することができません。常に新しい情報を発信することで、効率的な情報収集に寄与したいという主催者の意図が読み取れます。
ガイドツアー形式で実施される
来場する自治体福祉課担当者らは10名程のグループに分けられ、各製品のブースをガイドツアー形式で周ります。この方式により、出展者には全来場者(福祉機器の選定・意思決定者にあたる各福祉課職員)に確実に製品を紹介する機会が与えられます。また、来場者である福祉課職員には、一つのテーマに沿った製品をジャンルを問わずまとめて比較・検討する機会が与えられます。
CareWareのベネフィットは?
以上のように、日本の展示会とは毛色が異なるイベント、それが「CareWare」です。参加者と出展者のベネフィットは下記の通り整理できます。
参加者
・販売されていて、適用事例もある製品の情報を一度に取得できる
・テーマに対する様々なソリューションを横並びで比較できる
・他自治体の福祉課職員との横のつながりを構築できる
出展者
・福祉機器の選定に関わる福祉課職員に確実に製品を紹介できる
・福祉課職員の反応を直接確認できる
・知名度の低い新しいメーカーであっても、全国に認知されるきっかけになる
日本にもCareWareのような取り組みを広めたい
現在、日本の福祉機器市場には多種多様の製品が溢れており、かつ同種製品の優劣の差を並列的に確認できるという状況にはなっていません。その結果、テクノロジーの選択、改善プランの策定、オペレーションへの反映に非常に多くのコストがかかってしまっています。
このような状況を変えていくため、弊社は2019年9月に「CareWare Japan」を企画しました。テーマは「ソリューションが経営を変える ~介護職員が活きる職場づくり~」と題し、労働環境改善に効果のある5製品(サービス含む)が出展されました。
(下は、CareWare Japanでの弊社代表のスピーチです)
もちろん、日本とデンマークでは規模と制度が異なるため、ただデンマークの真似をすれば良いという訳ではありません。しかし、次々と開発される福祉機器がなかなか普及しない日本の現状を変えるためには、デンマークのような仕組みを日本に会う形で取り入れなければならないのではと考えています。
このような考えのもと、弊社は引き続きCareWareのような取り組みを展開して参ります。
まとめ
・CareWareとは、デンマークのオーフス市が主催する、福祉課職員と開発者のマッチングイベントである
・CareWareによって、福祉課職員は短時間で質の良い情報を取得でき、メーカーは製品紹介とその反応を確認できる機会を得る
・多種多様な製品が溢れる日本の福祉機器市場にも、CareWareのような効率的な取り組みが必要なのではないか
なお、2019年に開催した「CareWare Japan」については、下記の国際福祉機器展の公式ウェブサイトにて紹介されております。興味のある方はぜひチェックしてみてください。
国際福祉機器展公式ウェブサイト<https://www.hcr.or.jp/carewarejapan>