ATATとは、デンマーク技術研究所で開発された、福祉機器の評価を包括的に行うための方法論です。
一つの福祉機器を「機器」「経済性」「エンドユーザー」「福祉事業者」という4つの視点から評価することに特徴があります。
従来見落とされがちだったポイントも含めて包括的に評価できることから、開発国のデンマークでは福祉事業者(各自治体)、福祉機器メーカーにこの考え方が広まっています。日本では、SOMPOホールディングスのFuture Care Lab in JapanがATATを活用した実証試験を開始しており、少しずつその有用性が証明されてきています。
目的
ATATは製造業者、福祉事業者、行政機関、関連福祉団体に対して、福祉機器の導入検討の際に、その機器の必要性や影響、技術的制約、導入への障害を包括的に評価するための知識を提供する事を目的に開発されました。
その評価を通じて、国内外での適切な福祉機器利用のための基盤を作り、エンドユーザー、福祉労働者、福祉事業者、行政及び製造業者全体の利益向上につながる事を目指しています。
利用者が得られるもの
ATATは多くの福祉関係者に業務用ツールとして利用される事を意図して作られました。
例えば福祉事業者の場合、ATATによる評価は、どのように福祉機器を活用すればよいか、それらが業務課題に対し有効か、労働時間の削減につながるかの判断を助けます。
また、使用中の機器が活用できない場合はその理由や利用の妨げとなっている要因を示し、活用がうまく行かないエンドユーザーや環境条件に関する情報の獲得につながります。
製造業者の場合、ATATによる評価は、自社製品がエンドユーザーや福祉事業者にとってどう役立つのか、またコストの削減や労働環境の改善、エンドユーザーの生活の質の向上などにより、それらの製品が社会にもたらすメリットについて知見を得ることができます。
内容
ATATの基本となる考え方は、具体的な製品を対象として取り上げ、その利用が福祉サービスの質の向上とそれに係わる経済資源の有効活用に結びつくかを検証することです。その為には実際の福祉サービス上の課題を具体的な解決策(支援機器やロボット、ソリューション等の製品)に結びつける事が重要になります。
しかし、福祉事業者と製造業者が自身の力だけでこれらの課題と解決策を結びつける事は困難であり、福祉機器利用の潜在的な可能性と実際の利用実態の間に大きなギャップが生じています。これは下のような双方の経営課題の違いに起因しており、両者のギャップを埋める方法が求められています。
(1)福祉事業者:質の高い福祉サービスの提供と経営資源の効率的活用
(2)製造業者:福祉機器の製造販売による収益化と事業の成長
ATATは福祉機器利用の要件やその影響を具体的に評価することに焦点を置いており、上記のギャップを埋め、双方の関係者にとって望ましい結果を導くための手法です。
評価領域と評価項目
ATATは下記に示す4つの領域と各領域に属する8つの独立した評価項目で構成されます。
各項目の検証と分析には既存の論理的・科学的検証手法を使用します。
評価の目的、予算や時間などの制約、確認したい内容に応じて定量的または定性的な手法を使い分けます。特定の機器の評価において、明らかに関連しない評価項目がある場合はその項目を除外することも可能です。
しかし、基本的には全ての領域と項目を評価し、除外する項目がある場合はその理由を明確に説明できなれければなりません。
検証後、各領域・各項目のメリットとデメリットの詳細、倫理的問題に関する評価結果を報告書としてまとめます。
解説動画
ATATの概要を説明するプレゼン動画を弊社のYouTubeチャンネルにて公開しております(12分20秒)。
参考資料
①福祉機器評価手法ATAT(Assistive Technology Assessment Tool) Ver.1.0
産業技術総合研究所のウェブサイトよりPDFファイルをダウンロード可能です。
②ATATマニュアル簡易版
デンマーク自治体連合が上記の①を簡易にまとめて配布しているマニュアルです。デンマーク語だった資料を弊社が日本語に翻訳しました。
③ATAT評価モデルハンドブック
デンマークのコペンハーゲン市がATAT評価実施方法のガイドとして作成した資料です。デンマーク語だった資料を弊社が日本語に翻訳しました。
研修のご案内
ヤマグチでは、ATAT実施者研修を講師出張形式で行っております。