福祉機器評価手法の研修会を開催しました
「役に立つ福祉機器ならば導入したいが、本当にその機器が効果的なのかがわからない。」
このような福祉事業者さまの悩みにお答えすべく、弊社では福祉機器評価手法ATATの研修会を開催しました。
この記事では以下の内容について説明します。
福祉機器評価手法ATATとは?他の評価手法と何が違うのか?
ATATのメリットについて
参加者が研修会で得たもの
福祉機器評価手法ATATとは?
福祉機器評価手法ATAT(Assistive Technology Assessment Tool)とは、デンマーク技術研究所(Danish Technological Institute)が開発した福祉機器の評価モデルです。同研究所が行った福祉機器の有効性検証プロジェクトから得られた知見を元に、最新技術や評価実験に馴染みの薄い福祉事業関係者や開発メーカー向けに概念としてまとめられています。デンマークでは、デンマーク技術研究所が中心となり、その教育と普及が盛んに行われています。
ATATの目的は、福祉機器のメーカー、行政機関、福祉事業者、関連福祉団体に対して、福祉機器の導入検討の際に、その機器の必要性や影響、技術的制約、導入への障害を包括的に評価することにあります。
そのため、ATATでは機器の機能面だけでなく、経済性、福祉事業者、エンドユーザーという多面的な側面から福祉機器を評価します。例えば、いかに機能面が優れている機器であっても、エンドユーザーのQOL向上に効果的ではないと判断されれば、その機器の包括的な評価は下がることになります。
ATATのメリット
ATATの考え方に基づいて福祉機器を評価した場合、次のようなメリットがあります。
・福祉機器をどのように施設に導入すれば良いか、それらが業務課題に対し有効か、労働時間の削減につながるかの判断が可能になる。
・福祉機器をうまく活用できない理由や利用の妨げとなっている要因を明らかにすることができる。
なお、ATATについては、下記のページで詳しく説明しております。
研修会について
弊社では、デンマークの取り組みに倣い、日本国内へのATAT普及活動をしています。
今回のATAT研修会も、啓蒙活動の一環として東京都内で開催しました。
なお、研修の模様の一部を動画で公開しております。
研修当日
当日は、遠方から有料介護老人ホームの経営者と統括施設部長の方にご参加いただきました。
ディスカッションを交えながらATATの概要を説明させていただいたところ、参加者からは次のような悩みが寄せられました。
・ソフトウェアの改善をメーカーに要望しても、良い返事が帰ってこない
・福祉機器の活用事例などには興味があるが、地域の同業者は皆ライバルなので、それぞれが情報を出したがらない
・何か新しい取り組みを始めようとしても、職員それぞれで意識が異なるため、思うように進めることができない
・現場スタッフに組織の理念が伝わらない
これらのお悩みの中でも、「現場スタッフに組織の理念が伝わらず、組織一体で動くことができない」という点が特に大きな課題になっているようでした。
ATATは機器評価の方法というよりも、組織経営を考えるための手段である
ATATでは、機器の導入が現場スタッフにどのような影響を与えるのかという視点も重要な評価項目になっています。新しい福祉機器の使用は、スタッフの労働環境に変化をもたらし、業務内容や利用者との関係に新たな視点を与えますが、その一方で業務手順の変更や新たに学習する事への心理的な抵抗なども想定されるのです。
そこでATATでは、「その福祉機器の導入によってスタッフはどのように反応するのか?」さらに「スタッフの労働環境はどのように変わるのか?」というところまでスタッフに協力してもらいながら分析します。
例えば、現場にタブレットの導入が検討された場合には、それに対するスタッフの反応を確認するとともに、労働環境がどのように変わるのかを事前に把握しなければなりません。高価な福祉機器を導入したとしても、スタッフから良い反応を得られていなければ、その導入は失敗に終わる可能性があるのです。
福祉機器の導入に関わらず、スタッフの理解を得ることは組織経営において重要なポイントです。つまりATATは、福祉機器に限った話ではなく、組織経営全般に応用できる概念なのです。ATATに沿ったグループワークによって、参加者にもこの点を理解していただけたようでした。
制作元のデンマークではこの考え方が各自治体に広まっており、共通の評価軸(ATAT)を使って製品の活用事例などをシェアしています。しかし、この評価方法は日本ではほとんど認知されておりません。
弊社では、今後も研修会などを企画し、ATATの実施方法を日本国内に広めて参ります。